インタビュアー 中村美樹
そんな願いを持つ親たちに、知ってほしい子役スクールがあります。そのスクール「PASOC(パソック)演劇学校」は、子役のオーディション合格率は大変高く驚異的な成果を誇ります。このPASOCの代表であるテディくまださんにPASOC演劇学校についてお話しを伺いました。
PASOC演劇学校は生徒たちの夢を現実にするスクール

―インタビュアーの中村です。よろしくお願いします。
株式会社パソック代表のテディくまだです。こちらこそよろしくお願いします。
―テディさん、まずはPASOCについて教えてください。
パソックはアルファベットでPASOCと書きます。英語のPerforming Arts School Of Childrenの意味で、それぞれの単語の頭文字を使ってパソックです。
―テディさん流暢な発音ですね! 英語はペラペラなんですか?
いえ、薄っぺらいほうのペラペラ程度です。(笑) 自らも勉強のために定期的に海外に行くので薄っぺい程度で話します。(笑)
―(笑)さすが関西人。いや、なかなかの英語力だと思います。
この11月からは僕が頂戴する様々な舞台の子役指導としての仕事や演出の仕事、講演会などと、スクールに通う子供たちにオファーされた舞台やテレビ、映画などの仕事を管理する業務を《PASOC》名義で、子供たちの技術力の向上のためのスクール業務を《PASOC演劇学校》名義で運営することになりました。
―PASOC演劇学校は子ども達のスクールですか?
PASOC演劇学校は少人数制で子役を育成するスクールです。今は幼稚園の年長さんから大学生までの生徒たちが通っています。 レギュラークラスと特進クラスがあって、特進クラスは将来的にプロとしての活動をめざす生徒が一生懸命頑張っています。
―具体的にどんなレッスンをするのですか?
通常のレッスンでは歌と演技を学びます。ダンスは先生との相性や生徒それぞれの技術の差が大きいので各自の自由にしています。 また大型演目のオーディション前にはワークショップも開催したりしますが、この時はオーディションの合格に必要なスキルに合わせて、ダンスやアクロバット、殺陣(たて)のレッスンなどを追加したりもします。
―テディさんがPASOCを作ったきっかけを教えてください
まずPASOCの前身のナッツプロダクションを、今から約20年前に福岡で立ち上げました。舞台だけでなく、テレビドラマや映画、CMなど、福岡にいながらにして東京の現場もバリバリ出来る環境を作りました。 その頃の子どもたちも今は劇団四季に入ったり、韓国を中心に世界で活躍するガールズユニットで頑張っている子もいます。
―そこで実績と自信をつけて東京進出ですか?
そうではありません。きっかけは18代目中村勘三郎さんなんです。
―あの歌舞伎の名優の中村勘三郎さんですか
そうです。福岡時代は歌舞伎のお手伝いも多かったですね。当時は中村勘三郎さんの全盛期で御一緒させていただくことが多かったものの、 その勘三郎さんが突然病気で亡くなる出来事があって… 勘三郎さんはまだ50代の若さでしたから、早すぎるというか、 僕にとってもその衝撃は計り知れないものでした。 言い知れない不安が押し寄せてきて、もし自分があと数年で死んでしまったら演劇界に何を残せるだろう? そう考えたら福岡でそこそこの成功をおさめて満足している場合ではないと、一人でも多く未来の演劇界を支える後継者を育てるべく、自分の本拠地を東京に移しPASOCを立ち上げました。 気づきを与えてくださった勘三郎さんには感謝しかありません。
―そんな出来事があったのですね。それで後継者としての子役を育てようと
はい、そうなんです。今は子役が求められるクオリティ自体が上がっていて、オーディションもレベルが高くなっているので育て甲斐がありますね。
今は子役の台詞もリアリティがないとだめで、これまでのような『わーいわーい』なんて台詞では通用しなくなっています。
―子役がより努力を求められる時代なのですか
舞台自体のクオリティが高いと、どうしても能力の高い役者が求められます。もちろん子役とて例外ではありません。
映像と違って編集が出来ない。生でお客さまと接するので誤魔化しはききません。演技力や表現力が必要なので過酷な稽古になることもある。
大人の役者と同様のクオリティを子どもたちに課されるので、それは大変です。こんな僕でさえも教えながら時々可哀想に思うこともあります。
―テレビなどの映像と比べて難しいと?
難しさはそれぞれで、映像演技にも難しさや苦労は沢山あります。でもテレビで活躍している人気俳優や人気女優があえて舞台の仕事を入れるケースも最近は多く、それは舞台に出る経験や鍛錬をすることで、俳優自身に力がつくと分かっているからなんだと思います。
少し前までは、蜷川幸雄さんやつかこうへいさんという大演出家が映像畑の人を再教育したりしていました。
―なるほど。確かにそうですね。
沢山の俳優女優が技術に磨きをかけられましたね。
―テディさん自身も子役として活躍されましたね
たくさんの仕事をさせていただきましたが、僕の子役時代は黒歴史です。(笑)
―黒歴史ですか?
子役時代は与えられた役に対する勉強もあまりせずに、自分の感覚でなんとなくやっていた気がします。でもそれではダメなんです。
―テディさんは大学で演技の勉強をしたそうですね
大阪芸術大学舞台芸術学科に進み、演技や演出の勉強をしました。大学時代には師匠の秋浜悟史先生と出会い、
芝居とはどういうものか、演技とはどういうものかということを徹底的に叩き込まれました。
プロの子役として活動していたのに、それまで自分がやってきたことは“噓っぱち”だったと頭を打ちました。
今、PASOCでやっていることは、僕が18歳で気付かされたことを子どもたちに伝授することなんです。
―それが子どもたちの技術の向上に繋がり、オーディション合格率にも生きているんですね

気がつけば、あっという間の芸能生活50年です。(笑) その経験の全てが今の自分とPASOCの土台となっています。また沢山の人たちとの出会いが今を支えてくれています。
言葉に出来ないくらい感謝してもつくしきれません。
―周りの人にささえられているということですね
その通りです。
―そんなPASOCがネット上で事実無根の誹謗中傷を受けているそうですね
ネットの匿名の掲示板ですね。今の時代、ネットは意識せざるを得ないというか。その影響も大きいです。匿名の掲示板には、PASOCの代表は金の亡者だ、怪しい奴だ、
他のスクールの悪口を言う、金を積んでオーディションに合格させるとか、まあ言いたい放題です。僕自身の事なら叩かれても我慢しますが、毎日努力をしているうちの生徒や親御さん、
時には取引先を叩く書き込みもあって、さすがにそれはいかがなものかと。
―実際にPASOCはお金がかかるのですか
レッスン代や入会金は、適正価格だと思っていますが、どうなんでしょうね。もしかしたら『子役になるとお金がかかる』の意味を、親御さん達が誤解されているのかもしれません。
子役になると勉強のためや教養を身につける意味で、本を読んだり映画を観たり、またミュージカルや様々な舞台などを観る機会が増えるでしょう。時には海外の舞台やミュージカルを観に行くことがあるかもしれません。そんな芸術に触れるためのお金が今よりはかかりますよという事が、変な意味に拡大解釈されているのかもしれませんね。
過去にスクール業務だけをやっていた時は他の事務所さんと違って、マネージメントにかかる費用は頂戴していなかったので、それに伴うスタッフの電車賃や営業経費の一部を負担していただいたことが数回ありました。それも実費だけですよ。
―人が動くにはどうしてもお金がかかりますもんね
さすがにタダでは無理です。でもみんな『お金がかかるのは嫌!』なんですよ。それは僕も同じだから。(笑)
いずれにせよ謂れのない問題に対しては毅然とした態度で法的に対応するようにしています。
―PASOCは厳しいという書き込みもあるとか
僕はお子さんにも親御さんにも『ダメなものはダメ』とハッキリ言うから、それが厳しいと捉えられているのかなという気がします。しかも最近の若い親御さんたちは、注意されること自体に慣れていないですし抵抗があるのかもしれません。それで僕の関西弁の言い回しがとがキツイ、厳しいと思われているのかもしれない。まあ、その気持ちは理解できます。
しかし僕にもPASOC代表としての責任があります。子どもたちの夢の実現のためにも、言うべきことは言う、やるべきことはやっていきたいとは思っています。
―レッスン自体は厳しいですか?
今は労働基準法が厳格で、特に子役にはあまり無理をさせられないからレッスンはそんなに厳しくできないですよ。ただプロというのは、甘えてはいけない場がすごく多くて…。それは本人もそうだし親御さんにも言えます。でも親御さんの中には「そんなに厳しくしなくても…」と反論する方もいまして。
それであまりにも御理解していただけない場合は、御理解が得られるよう、お互いが納得するまで話をすることもあります。芸能界の常識と一般社会の常識がまだまだかけ離れているのでいたしかたないです。だけど親御さん達は皆さん大変協力的で、いつもあたたかい目で見守っていただいています。本当に心強いし、ありがたいですね。
―子役を目指すお子さんと親御さんへのメッセージをお願いします
PASOCは、生徒たちの夢を現実にするための努力は惜しみません。大事なお子さん達を、僕をはじめ講師たちが責任を持って育てます。
お子さん達はPASOC心得(*注1)を大事にしつつ、しっかりとレッスンを重ねてくれれば大丈夫です。
―テディさんの今後の展望をお聞かせください
僕はお子さんたちに、演劇教育によって技術だけでなく、心も強く優しく鍛えようと思っています。
また僕たちが指導した子役たちの中から、次の演劇界を支える演劇人、舞台人が育てばこんなに嬉しいことはありません。
長い目でみて子役からいい役者が育てば、今まで僕を育ててくれた師匠や先輩方また両親への恩返しにもなると思っています。
だからこそこれからも、将来有望な子役をしっかりと育てていきたいですね。
また演劇の裾野を拡げるためにも子どもたちだけに限らず、幅広い年齢層に新しいアプローチをしようとも考えています。
―それはとても楽しみです。テディさん、ありがとうございました。
こちらこそありがとうございました。
注1:パソック心得
まわりに感謝し、まわりを思いやる優しい心!
一、創造し、挑戦する向上の心!
一、自分を信じ、あきらめない不屈の心!
一、悩みを抱えず、人を信頼する勇気の心!
一、どこまでも謙虚で、たゆまぬ努力の強い心!
プロフィール
テディくまだ
演出家・劇作家・子役指導。
漫才トリオレツゴー三匹のリーダー・レツゴー正児の長男として大阪に生まれ、幼い頃よりTV番組、商業演劇、ミュージカル等の舞台に立つ。
デビューは田村正和主演の「眠狂四郎」。
大阪芸術大学舞台芸術学科に進学、演技演出を専攻。
演出家で劇作家でもある秋浜悟史に師事。
演出家として、コンサート・演劇・ステージ・イベント・テレビ・映像等の演出活動をする。
東京・大阪で専門学校などの講師として人材育成に取り組んだのち、2000年福岡で芸能プロダクション・ナッツプロダクションを設立。以降、多くの人材を育成。
2006年 東京 オフィス開設。2013年福岡オフィスを閉鎖。本拠地を福岡から東京に移す。
ミュージカルからストレート、歌舞伎まで、その人材育成術には定評があり、この10年だけでも100作品、のべ200人以上の子役を商業舞台に輩出している。
(一例として『ビリー・エリオット』ビリー・デビー/『ライオンキング』ヤングシンバ・ヤングナラ/『レ・ミゼラブル』ガブローシュ・リトルコゼット/『1789』シャルロット/『フランケンシュタイン』リトルビクター/『サウンドオブミュージック』『風と共に去りぬ』/『放浪記』/他)
2014年、プロダクション業務から離れ、フリーに。
2015年よりPASOC(Performing Arts School of children)代表。
また、ここ1,2年は、大型商業作品の子役指導を担当することも多く『トリッパー遊園地』(A.B.C-Z/河合郁人主演)・『三婆』(大竹しのぶ主演)・『有頂天シリーズ』(渡辺えり・キムラ緑子主演)・『家族はつらいよ』(山田洋次演出・新派公演)・『グリークス 』(PLAY公演)など作品の子役指導を歴任している。
